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サイバー攻撃を想定したBCPの作り方|診療所はひな形を埋めればいい

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サイバー攻撃を想定したBCPの作り方|診療所はひな形を埋めればいい

公開日 2026-10-15チェックリストの項目:3-②・3-③

サイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)は、チェックリスト3-③で立入検査の際に現物を確認されます。厚生労働省の確認表と、診療所向けに短くした静岡県医師会・静岡県や日本医師会のひな形を使えば、ゼロから作る必要はありません。埋める順番を解説します。

目次
  1. BCPに求められていること
  2. 厚生労働省の確認表で、必要な項目を押さえる
  3. 診療所は、短いひな形を使う
  4. 埋める順番
  5. 診療報酬の施設基準のBCPとの関係
  6. 今日やること

サイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)は、システムが止まったときに、どの業務をどう続け、どう戻すかを決めておく計画です。チェックリストの3-③で、立入検査で現物を確認される書類の1つです。

ゼロから作る必要はありません。厚生労働省の確認表で必要な項目を押さえ、診療所向けに短くしたひな形(静岡県医師会・静岡県や日本医師会のもの)を埋めていくのが近道です。

BCPに求められていること

チェックリストマニュアルは、3-③について次のように説明しています。

  • 経営層は担当者と一緒に、非常時に業務を続けるかどうかの判断基準や、どの業務を続けるかの決め方を検討する
  • そのうえで、サイバー攻撃の想定を含むBCPを整える
  • BCPがあれば、攻撃を受けても重要な業務が止まらない、止まっても短い期間で再開できることが期待できる

あわせて、業者がBCPを作っているかも、事業者確認用のチェックリストで確認するよう求めています。業者が攻撃を受けて、サービスが止まる事案も多いためです。

そして、BCPを作っていても実際には運用できず、バックアップから戻せなかった事例も多いとして、訓練をしておくことが望ましいとしています。

小さな診療所なら、判断の目安はシンプルでいい

小規模な医療機関向けのガイドライン(保守委託機関編)は、BCPの考え方として、次のような整理を示しています。

  • 短い時間の障害なら、一時的にシステムの利用を控える
  • 数日以上続くなら、診療を縮小する、紙で対応する

何時間止まったら紙に切り替えるのか、誰がそれを決めるのか。この2つが書いてあるだけでも、いざというときの迷いは大きく減ります。

厚生労働省の確認表で、必要な項目を押さえる

厚生労働省は2024年6月に、BCPに最低限必要な項目を確かめるための「サイバー攻撃を想定したBCP策定の確認表」と、その手引き、ひな形を公開しています。

確認表は、攻撃の前から後までを5つの段階に分けています。

サイバー攻撃を想定したBCPの「5つの段階」

  1. 1平時機器の把握、連絡体制図、教育、バックアップと復旧手順を整える
  2. 2検知異常に気づき、決まった報告先に知らせる
  3. 3初動対応ネットから切り離して広がりを止め、業者・厚労省・警察へ連絡する
  4. 4復旧業者と一緒に、バックアップから戻して結果を確かめる
  5. 5事後対応漏えいの有無を報告し、再発を防ぐ手を打って共有する
  6. +止まっている間の診療紙カルテなど、業務ごとの代わりの方法を決めておく

確認表の冒頭には、過去の事例でつまずいた点として、次の3つが挙げられています。

  • 初動対応が話し合われておらず、証拠の保全が不十分だった
  • ネットワーク機器の配置が分からず、原因の究明に時間がかかった
  • ランサムウェアでバックアップまでやられ、復旧が難航した

BCPを作るときは、この3つに答えが書いてあるかを意識すると、中身のある計画になります。

診療所は、短いひな形を使う

厚生労働省のひな形は「医療情報システム部門等におけるBCPのひな形」という名前のとおり、病院の情報システム部門を前提にしています。○○病院・部門責任者といった言葉が並び、診療所がそのまま使うには削る作業が必要です。

診療所には、次のひな形のほうが使いやすい分量です。

ひな形 作った団体 特徴
小規模医療機関向けBCPのひな形 静岡県医師会・静岡県 Wordで短い。別紙の連絡体制図・情報機器一覧とセットで静岡県のページに掲載
事業継続計画(BCP)ひな型(サイバー攻撃) 日本医師会(実践ガイドの付録) 院長を責任者とした6ページほどの構成
診療所用 業務継続計画(BCP)のひな形 日本医師会 災害が中心で、サイバー攻撃は電子カルテ停止時の1つの枠

静岡県医師会・静岡県のひな形の中身

静岡県医師会と静岡県のひな形は、次の3つの章でできています。

  1. 総則:目的、基本方針、対象とするシステム(電子カルテ・レセコン・画像システムなど)、想定する事象(標的型メール、不正アクセス、ランサムウェアなど)
  2. 体制整備:責任者(院長)と連絡体制図、情報機器の台帳、代わりの運用、バックアップの体制
  3. サイバーインシデント発生時の対応:初動対応(発見・報告、被害拡大の防止、証拠の保全と原因調査、外部への連絡)と、業務の継続(復旧の対応、診療できるかの判断と診療の形の決定)

チェックリストの連絡体制図(3-①)や機器の台帳(2-①)が、そのままBCPの別紙になる作りです。先に作っておけば、BCPの半分は埋まります。

埋める順番

ひな形を使う場合も、次の順で埋めると無理がありません。

1. 止まったら困る業務と、代わりの方法を表にする

厚生労働省のひな形には、業務ごとの代わりの手段の例が載っています。

業務 代わりの手段の例
診療録 紙のカルテで運用する
処方・検査 紙の伝票(複写式)で運用する
画像 撮影機器の端末で見る
会計 未収として扱うことを検討する

紙で運用するなら、紙の伝票や帳票を最新にして準備しておく、プリンタや用紙・トナーを用意しておくことも、手引きで例に挙げられています。

想定する「困りごと」を先に書いておく

厚生労働省のひな形は、BCPで想定する事象として、次のような状態を例に挙げています。

  • 診療情報が確認・参照できない
  • 診療情報が入力できない
  • スタッフ同士で連絡がとれない
  • 情報機器や医療機器が操作できない

原因は、不正アクセス、標的型メール、ランサムウェアなどのウイルスです。「何が起きたら困るか」を先に書いておくと、代わりの方法の表が埋めやすくなります。

2. 何時間止まったら切り替えるか、誰が決めるかを書く

先ほどの保守委託機関編の考え方にならって、短時間なら利用を控える、長引くなら紙に切り替えるという基準を、自院の言葉で書きます。判断するのは院長、不在なら代理の人です。

3. 気づいたときの最初の動きを書く

日本医師会の診療所用BCPの記載例では、電子カルテや請求システムが止まったときの対応として、次のことが挙げられています。

  • 感染が疑われるパソコンやサーバを、LANケーブルを抜く、Wi-Fiを切るなどして通信から切り離す
  • パソコンは原則としてシャットダウンしない(記録が失われるため)
  • 業者・保健所・警察・個人情報保護委員会へ連絡し、厚生労働省の初動支援(MIST)にも相談する

連絡先は連絡体制図にまとめておき、BCPには「別紙の連絡体制図に従う」と書けば足ります。

広がりを止める順番

厚生労働省のひな形は、被害の拡大を防ぐために切り離す順番を、次のように示しています。

  1. まず、バックアップにつながるネットワークを遮断する(バックアップまで暗号化されるのを防ぐ)
  2. 外部との通信経路を遮断する
  3. ネットワークの区切り(セグメント)の境目で遮断する

診療所では、どこを抜けば切り離せるかを業者に聞き、ケーブルやスイッチの場所を写真つきでBCPに貼っておくと、当日の判断が速くなります。

4. バックアップと戻し方を業者と決める(3-②)

チェックリストの3-②は、診療を続けるために必要な情報を決め、バックアップをとり、戻し方を確認していることを求めています。戻し方は、BCPの中に書くのも1つの方法です。

  • 重要なファイルは、複数の方式で、何世代か残す(毎日とるなら3世代で3日分)
  • 3世代目以降はネットから切り離した状態で保管するのが望ましい

クラウド型の電子カルテなら、バックアップや復元は業者に頼む前提になります。業者が何世代残しているか、戻すのにどのくらいかかるかを確認して書き込みます。

5. 年に1回、訓練して見直す

ガイドラインの経営管理編は、BCPがすぐに実行できるよう、定期的に訓練・演習を行うよう求めています。

大がかりな訓練でなくても構いません。たとえば休診日に、「電子カルテが止まった」と仮定して、紙の伝票で受付から会計までを1人分通してみるだけでも、足りないもの(用紙、手順、連絡先)が見つかります。

診療報酬の施設基準のBCPとの関係

令和8年度の診療報酬改定で、機能強化加算や在宅療養支援診療所などの施設基準に、BCPの策定が加わったと日本医師会が案内しています(令和9年5月31日まで)。厚生労働省の疑義解釈では、日本医師会の診療所用のひな形を参考にしてよいとされています。

こちらは災害を含む全体のBCPの話で、サイバー攻撃専用ではありません。日本医師会のひな形は、災害のBCPの中に「電子カルテや請求システムが停止している場合(サイバー攻撃を含む)」という枠を設けています。

1冊にまとめる場合も、チェックリスト3-③の「サイバー攻撃の想定」が書かれているかは、上の5つの段階に照らして確認しておきます。

今日やること

  1. 静岡県のページから小規模医療機関向けのひな形をダウンロードする(日本医師会の会員なら実践ガイドの付録も使える)
  2. 止まったら困る業務と、代わりの方法の表を先に作る
  3. 業者に、バックアップの世代と戻すのにかかる時間を確認して書き込む

ここまでできれば、3-②と3-③は「はい」に近づきます。最後に、BCPがあることを運用管理規程に書いておきます。

よくある質問

Q.診療所向けのBCPのひな形はありますか?

A.厚生労働省のひな形は病院の情報システム部門を前提にした内容です。診療所なら、静岡県医師会と静岡県が作った「小規模医療機関向けBCPのひな形」や、日本医師会の実践ガイドの付録にあるサイバー攻撃用のひな型のほうが使いやすい分量です。

Q.災害用のBCPがあれば、サイバー用は要りませんか?

A.ガイドラインは、災害・サイバー攻撃・システム障害で必要な対応が違うとしています。日本医師会の診療所用BCPのひな形のように、災害用の中にサイバー攻撃の枠を設ける形もありますが、チェックリスト3-③は「サイバー攻撃の想定を含む」BCPを求めているので、その部分が書かれているかを確認してください。

Q.診療報酬の施設基準でもBCPが必要になったと聞きました。

A.日本医師会の案内では、令和8年度の改定で、機能強化加算や在宅療養支援診療所などの施設基準に、令和9年5月31日までのBCPの策定などが加わったとされています。厚生労働省の疑義解釈では、日本医師会の診療所用のひな形を参考にしてよいとされています。こちらは災害を含む全体のBCPの話です。

Q.BCPは一度作れば終わりですか?

A.定期的な見直しと訓練が求められています。チェックリストマニュアルも、BCPを作っても実際には運用できず、バックアップから戻せなかった事例が多いとして、訓練をしておくことが望ましいとしています。

Q.バックアップはどのくらい残せばいいですか?

A.チェックリストマニュアルは、重要なファイルを複数の方式で世代管理するよう求めています。たとえば毎日とるなら3世代で3日分です。3世代目以降はネットから切り離した状態で保管するのが望ましいとされています。

出典(10件)
  1. 令和8年度版 医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストマニュアル(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15
  2. 【医療機関用】サイバー攻撃を想定したBCP策定の確認表(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15
  3. 【医療機関用】サイバー攻撃を想定したBCP策定の確認表のための手引き(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15
  4. 医療情報システム部門等におけるBCPのひな形(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15
  5. 医療法第25条第1項に基づく立入検査の実施について(小規模医療機関向けBCPのひな形)(静岡県) 閲覧日 2026-10-15
  6. 診療所用 業務継続計画(BCP)のひな形について(日本医師会) 閲覧日 2026-10-15
  7. 疑義解釈資料の送付について(その12)(令和8年9月2日)(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15
  8. 医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリストの実践ガイド(2025年11月)(日本医師会(広島県医師会ホームページ掲載)) 閲覧日 2026-10-15
  9. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 経営管理編(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15
  10. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版 保守委託機関編(厚生労働省) 閲覧日 2026-10-15

文:医療サイバー対策ナビ編集部(運営:株式会社OpenYouth) 編集方針

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